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経済指標としての履物

 

2019年のベストセラー、FACT FULLNESS(ファクトフルネス)という本の中にこんな一節がある。

”モザンビークの首相を務めたパスコアル・モクンビは、(略)モザンビークが急激な経済発展を遂げているとわたしに教えてくれた。どうしてそう断言できるのですかと尋ねてみた。モザンビークの経済統計はあまりあてにならなかったからだ。(略)

「でも数字が間違っていることもある。だから毎年メイデーのお祭りをしっかり観察することにしたのさ。(略)市民の足元を見て、どんな靴を履いているのかを観察するんだ。お祭りの日には、みんなめかしこんで出かける。友達の靴を借りたりできない。友達もおしゃれして祭りに繰り出すからね。だからいつもじっと足元を見てるんだ。裸足か、ボロ靴か、それともいい靴を履いているか。それで前の年と比べてみる」”
『FACT FULLNESS』p.247 ハンス・ロスリング他 

 

一国の首相が経済指標として靴を見ていたという話だ。

もちろんGDP、貿易額、株価などの各種経済指標はチェックしたうえで、統計では捉えきれない”実際の国民生活”を知るために毎年お祭りの日に市民の靴を観察していたという。

 

 

ビジネスの世界でも「まず足元を見よ」と言われる。

見栄を張って着飾ろうと立派なスーツや高級腕時計を身に着けても、なかなか靴までは気が回らないからだ。

 

夜の街のお姉さんからも同じような話を聞いたこともある。
髪や服に隙がなくバッグも時計も高級品で固めていても、靴が薄汚れていると「底が見える」らしい。



顔から遠く離れた靴だからこそ、”本音”が出やすいのだろう。