· 

海上運賃の高騰はいつまで続く?

 

海上運賃の高止まりが続いています。

 

主な原因はコンテナ不足ですが、弊社の主要取引先である中国、台湾等のアジア地域航路では現在コンテナ一本当たりUSD500~1,500ほどのGRI(General Rate Increase = 運賃一斉値上げ)と呼ばれるサーチャージが導入されています。これは本来の運賃の倍額にもなる非常に高額なレートです。

昨年10月のGRI導入当初は適用地域も華南地域の一部のみで金額もUSD50~100程度、あくまでも限定的な措置で来年の春節明けには落ち着くだろうとされていたのですが、予想に反し、その後対象地域はアジア全域に拡大され金額も跳ね上がり、次の春節が近づいてきた今になっても収束の気配は見えてきていません。

弊社でも船会社と連携を取りながら情報収集に努めていますが、現在のところは価格を度外してでも納期に合わせたブッキングを確保することに注力せざるを得ないというのが正直なところです。

 

当初は数ヶ月で収束すると見られていた運賃高騰がなぜこんなにも長引いてしまっているのか?

 

 

 そもそもコンテナ不足に陥った要因は、大きく分けて下記3点が指摘されています。

 

 

① 新造コンテナの不足

 

新造コンテナの9割以上は中国で生産されています。

アメリカはその主たる輸出先ですが、2018年、その米中2カ国による貿易戦争が勃発しました。

アメリカが中国の鉄鋼製品に大幅な追加関税をかけたのを皮切りに両国はお互いに報復的な関税をかけ合う関税合戦となり両国関係も著しく悪化したため、需要減少を見越したコンテナ製造業者は前年比4割ほどまで生産を一気に抑制しました。

さらに2019年にはコロナ禍が発生したためコンテナ供給量は一段と絞られ、世界のコンテナ数は極端に少ない状態となっていました。

 

 

② 物流機能の低下

 

瞬く間に世界中に拡散したコロナウイルスは物流にも甚大な影響を与えました。

港湾、倉庫、税関など流通の要衝も感染が広がる度に閉鎖され人員不足に陥り、世界のコンテナ還流に大きな支障をきたしました。
特に北米航路では沖合に着岸待ちのコンテナ船が多数滞留し、内陸に運ばれたコンテナは倉庫やターミナルに留め置かれ戻ってこない事態となりました。

 

 

③ 製品需要の急激な回復

 

世界の工場である中国は徹底的な封じ込め策によりいち早く供給体制を立て直しました。

また消費地である欧米各国も早期にwithコロナ政策に打ち立てて経済の立て直しを図りました。また感染拡大の懸念から消費がコトからモノへとシフトしたことも物流増大を後押ししました。

 

 

まとめると、①もともとコンテナが少なかったうえに②オペレーション能力も低下していたので③急激な需要回復に対応できなかったためにコンテナ不足と運賃の高騰を招いてしまったということになります。

 

 

 

 

今後についてもあまり明るい見通しは聞こえてきません。

新造コンテナ数こそ今年に入り過去最高レベルで生産されているようですのですが、これから迎えるクリスマス・春節という需要期の消費、景気回復の力強さ、今後のコロナウイルスの感染状況、更に素材・原料相場、原油価格の高騰といった懸念材料も加わり、世界で密接に絡む物流網が果たして今後どのような道筋で正常化へと向かうのか、あるいは変質するのか、予断を許さない状況です。

 

 

世界的なインフレ傾向が見られるなか、経済の血管である物流の目詰まりが長引けば市民生活にも大きな影響を与えることは必至です。

 

モノの移動を通して人々の生活に役立つことを目指す私達のような企業にとっても安定した物流は欠かせません。

 

早期安定化に期待しつつ、滞りのなく業務を進めていけるよう最大限の努力を続けてまいります。