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意外と知らないコンバース事情

コンバースジャパン株式会社がブランド生誕115周年を迎える来年(2023年)を期にコーポレートロゴ等を含むビジュアルアイデンティティを刷新すると発表されました。

(コンバースがブランド生誕115周年を機に、ビジュアルアイデンティティをリニューアル。)

https://www.iza.ne.jp/pressrelease/prtimes/TQWSO6XQ5BJWTF7JDCBXSUS6GM/

 

115年とは凄いですよね。当時の日本は大日本帝国、中国は清の時代です。

正に時代を超えて愛されるブランドとなっていますね。

 

 

で、その愛が故に?

日米コンバース事情が少し複雑なことになっているのはご存知でしょうか?


そもそもコンバースはアメリカ生まれのブランドで、その所有権(商標権)も当然ながらアメリカのコンバース社(Convere Inc.)が持っています。

日本でコンバースを展開するのは冒頭のコンバースジャパン株式会社ですが、当然ながら米コンバースからライセンス許諾を得て活動している…わけではないんですね。実は同社は米コンバース社の支社でもなく関連会社でもなく、単に「同じコンバースブランドを展開する別会社」なのです。

 

そんなことって…許されるの?

と思っちゃいますよね。

 

なぜそんなことになったのか少し歴史を紐解いてみましょう。

 

 

コンバース社の歴史は1908年、マーキンス・M・コンバースがConverse rubber and shoe companyを興したところから始まります。

祖業はその名の通りゴム靴製造で作業用のゴム靴を製造していたようです。

同社に転機が訪れたのは1917年、バスケットボールシューズの「コンバース オールスター」を発売するとたちまち人気となり、改良に携わったチャック・テイラーの優れた手腕もありその後も大きな成長を遂げました。この辺りのことは以前の記事で書かせていただいています(コンバース オーススター サインは誰のもの?

同社はその後もジャック・パーセルなどのヒット作を生みだし順調に事業を拡大していましたが、やがて次々と勃興する新興ブランドとの競争が激しくなると徐々に苦戦を強いられるようになり、2001年には遂に破産を申請する事態にまで陥ってしまいました。

 

しかし高いブランド力を有しているコンバースですので再建のため新コンバース社(Footwear Acquisition,Inc.、後にConverse Inc.に商号変更)が立ち上げられ、日本からも伊藤忠商事が資本参加して5%の株式を取得しました。

翌年には伊藤忠商事によりコンバースジャパン株式会社が設立されて日本国内におけるシューズやアパレルグッズの商標権が移転されました。


事態が動いたのは翌2003年。

アメリカの新コンバース社がナイキによって3億3000万ドルで買収され、伊藤忠商事は保有する株式を全てナイキに譲渡したのです。

その結果、米コンバース社(Converse Inc.)と日本のコンバースジャパン社(Converse Japan Co., Ltd.)という、それぞれ正式にコンバースの商標を有するものの資本関係を持たない2社が存在することとなりました。

 

以来今日まで両コンバース社は同ブランドの類似商品を取り扱いながらも企画・製造は独自に行うという形になったのです。

 

ただし別会社とはいえ同ブランドを扱う両社ですから当然のことながら、互いのマーケティングやデザイン等を調整および共有する必要があり、両社間では共同マーケティング契約が締結されているようです。
その結果、だと思いますが両社の商品はよく似ていますし、冒頭のコンバースジャパンの新ロゴも米コンバースの旧ロゴとそっくりですね。(全く同じなのかな?)

 

 

米コンバースのロゴ変遷。
2011-2017年のロゴがコンバースジャパン社の新ロゴに酷似している。
(画像はhttps://1000logos.net/converse-logo/より)

 

そんなちょっと珍しい両社の歴史も消費者には関係ない…わけでなく、とっても関係があります。

日米で商標権者が異なる結果、日本には米コンバース社の商品は輸入できないのです。

 

上述のとおり協力関係にあるとはいえど日本の法制上は別会社であり資本関係もない両社は商標法における「実質的同一性」の要件を満たさないため、商標法上、米コンバース商品は伊藤忠商事の権利を侵害していると見なされ、同社の許諾がない限り日本には輸入できず、日本に持ち込もうものなら税関で没収されてしまいます。(*下記注)

素人感覚からするといわゆる「本家」の商品が権利侵害とされ輸入できないのは不思議な感じがしますが、これについては過去に米コンバース商品を並行輸入していた株式会社ロイヤルと、その差し止めと損害賠償を求めた伊藤忠商事が法廷で争い、2010年に原告勝訴の知財高裁判決が出て正式に認められています。(コンバース事件)

(*注)栗原潔弁理士の見解によりますと旅行者による自己使用のためのハンドキャリーは対象外と思われるとのことです。

(https://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20201106-00206592)
以前は実際に税関で没収されてしまった話などをSNS等で目にしましたが、コロナ禍で往来自体が減っていることもあり現状はよく分かりません。いずれにせよ上述のような事情があるということは頭の片隅に入れておいて損はないかと思います。

 

 

 

米コンバースもコンバースジャパンもそれぞれ魅力的な商品を扱っているので、いち消費者としてはどちらも気軽に買えるようになるといいのにな、と思いますが中々難しいところがありそうですね。

 

 


弊社はあいにくコンバース商品は輸入はできませんが、各種PBのキャンバスシューズやストリートカジュアル商品の輸入実績は豊富にございます。コンバースの祖業、ゴム長も得意ですよ!

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